医療に関する豆知識

 

【2013/05/23】
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療の保険適応について

副院長 淡川 照仁

平成25年2月22日よりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険適応となりました。
ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌発症の原因菌として知られています。
ピロリ菌は日本人の約半数にあたる推定6000万人が感染しているとされ、特に50歳以上の約7割が感染していると言われています。日本人の死因の第1位に位置する癌の中で胃癌は肺癌に続く第2位を占め、胃癌患者のほとんどがピロリ菌に感染しているとされています。ピロリ菌感染者の全てが胃癌になるわけではありませんが、ピロリ菌の除菌治療は胃癌発症の回避につながると考えられ、将来的な胃癌患者数の減少に期待が持たれています。
ピロリ菌に対する除菌治療は先ず平成12年11月より胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対して認められるようになり(1次除菌)、平成19年8月より1次除菌不成功例に対する2次除菌治療が認められ、さらに平成22年6月からは胃MALT(マルト)リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者さんにも保険適応が拡大されました。
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療を保険診療で行うためには1.胃内視鏡検査により胃炎の所見を確認することと、2.除菌前の感染診断を(1)尿素呼気試験、(2)血中抗体測定法、(3)尿中抗体測定法、(4)便中抗原測定法、(5)迅速ウレアーゼ試験、(6)鏡検法、(7)培養法の何れかで行い、陽性であることが必要となります。
ピロリ菌感染を確認するだけではなく、胃癌は除菌治療では治らないため除菌治療前に胃内視鏡によって胃癌の有無を確認することが必要とされました。
また、たとえピロリ菌除菌が成功したとしても胃癌発症のリスクがゼロになるわけではありませんので、定期的な内視鏡検査をお勧めいたします。