医療に関する豆知識

 

【2013/10/21】 NBI内視鏡とは?

院長 小林 壮光

NBI内視鏡とは?

NBIとは、Narrow band imaging(狭帯域光観察)の略称で、照射する光の波長の範囲を狭くして、照射される面の細かな変化を強調させる技術(画像強調観察技術)です。その仕組みと、これを応用したNBI内視鏡について説明します。

(1)光の3原色とNBIの光 (図1参照)

赤いリンゴは何故赤い色と認識されるのでしょうか。赤・青・緑の3原色からなる自然光がリンゴに当たると青と緑の光がリンゴに吸収され、赤い光のみが反射されて我々の目に返ってくるからです。そこで赤を抜いた光を当てると、リンゴは反射する光を失い黒くなります。これがNBIの基本原理で、NBIでは照射される光が選択されます。
ちなみにNBIの技術を応用したNBI内視鏡では、赤を含まない光を照射し、赤い血液の反射光を除いています。

(図1)
白色光(左)では、赤いリンゴが見える。
NBI(右)では、リンゴが反射光を失い暗く見える。
(2)NBIの光とNBI内視鏡 (図2参照)

血液が赤く見えるのは血液中のヘモグロビンが青と緑の光を吸収し、赤い光を反射するからです。そして、ヘモグロビンは波長415nmの青い光と、波長540nmの緑色の光を強く吸収します。特に415nmの青い光には極めて強い吸収特性を有しています。NBI内視鏡では、赤を極力除き、この415nmおよび540nmの、波長を狭小化した光が放出されます。 理論的には、赤くなった粘膜は黒く見えるはずですが、実際には赤い光の成分が完全に取り除かれるのは困難な為、茶色(ブラウン)の色相を呈します。また、狭帯化された青と緑の光に照らされた粘膜は青緑色(シアン)で表されます。

白色光(左)では、粘膜に赤い びらん面がみられる。
NBI(右)では、境界が明瞭な茶色を呈した領域として認められる。
(3)内視鏡と粘膜内血管

NBI内視鏡からは415nmの青い光と、540nmの緑の光が放出され消化管粘膜が照らされます。このうち415nmの青い光は粘膜表層で反射されて返ってきますが、血管内に侵入した光はヘモグロビンに吸収されて戻らずに暗さを増します。このため、コントラストの強い血管強調画像となり、茶色の血管が明確に描出されます。
一方、540nmの緑色の光は、その一部は表層血管のヘモグロビンによって吸収されますが、大部分は粘膜深部に進み、比較的深部の血管を照らして散乱し、光として戻ってきます。すなわち、NBIの光では、表層血管が茶色に、深部血管が緑色に描き出されます。

(4)NBI内視鏡と癌細胞 (図3参照)

がん細胞は血管から栄養を補給して急速に増殖するため、癌領域には小さな血管が集りやすくなります。NBIはこの小さな異常血管を発見する有効な手段となります。
また粘膜表層の微細粘膜模様が強調されます。これらの画像を拡大して観察することにより、癌細胞などの異常な形態をきたした細胞を早期に発見します。

白色光(左)では、潰瘍中心部に向かう粘膜ヒダの集中像と
再生粘膜が認められ、胃潰瘍の治癒過程と考えられる。
(矢印は潰瘍中心部を示す)NBI拡大 (右)では、再生粘膜の微細構造がみられる。
粘膜は弧状の形態を示しており悪性像は認められない。