医療に関する豆知識

 

【2015/03/06】胸痛と食道疾患

院長 小林 壮光

「胸痛」をきたす病気といえば、ほとんどの方が狭心症や心筋梗塞など、心臓疾患を思い浮かべるでしょう。しかし、食道の"けいれん"でも胸痛が生じることも忘れてはなりません。この胸痛は「非心臓性胸痛」とも呼ばれ、時には激痛となることもあります。非心臓性胸痛をきたす代表的疾患である"びまん性食道けいれん"を取り上げてみます。

【びまん性食道けいれんとは】
 食物を飲み込んだ時、食道は上部から下部に向かって順番に規則正しく収縮し、食物は胃に運ばれます。このような食道の運動は「ぜん動運動」と呼ばれます。びまん性食道けいれんは、ぜん動運動がなくなり食道の広い範囲が一気にけいれん性の収縮をきたす病気です。これに伴い、食物がスムースに移行しなくなるばかりでなく、胸痛も出現します。この病気では、レントゲン検査および食道内圧検査で特徴的な所見が認められます。

【レントゲン検査】
びまん性食道けいれんの食道バリウム写真では、食道の広い範囲にけいれん性の収縮がみられます(図1)。
時に、食道がワインの栓抜きのようにらせん形を示し、コルク栓抜き(コークスクリュー)食道と呼ばれることもあります。

【食道内圧検査】

(図2)食道内圧測定器
食道内の数箇所に圧力センサーを挿入し、水を飲み込んだ後の圧力の変化を測定することにより、食道の運動が明らかにされます。
当院では、胃-食道移行部、それより5,10および15cm口側の4箇所で圧力を測定しています(図2)。健常人では食道上部から下部に向かって移行するぜん動運動が確認されますが、びまん性食道けいれんの患者さんでは、多数の同期性のけいれん性収縮が認められます(図3)。

びまん性食道けいれんは、レントゲン写真、食道内視鏡検査などにより疑われますが、確定診断のためには食道内圧検査が必要となります。気がかりな症状のある方は、専門病院を受診して検査をお受け下さい。

(図1)
(図3)食道内圧検査所見